
この記事の目次
残業、休日出勤、急な出張 家を空けることが多くなった夫
年上男性との“できちゃった婚”
大学卒業後、部品製造を行っている会社の事務として働いていた私。働いてまだ半年ぐらいしかたっていない23歳の時、会社の人の紹介で、中堅商社で営業をしている8歳年上の今の夫と知り合ったんです。
初対面の時は気にもかけていなかった彼ですが、何度が2人で会ううちに年上の包容力に魅力を感じ初め、関係をもつことに…。
出会いから半年ほどが経った時、妊娠が発覚。そのことを彼に告白すると「僕がしっかりと、面倒を見るから結婚しよう」と言ってくれたんです。この言葉を聞き、「この人なら大丈夫」と思って、一緒になることを決めたんです。
当初、両親や周囲の友人たちにも心配されました。でも彼も説得に協力してくれたこともあって、私の中での不安は徐々になくなっていきました。そして、長男を無事に出産。1年間の育休を経て、息子は近所の保育園に預けることで、職場に復帰することもできました。
私自身、家事に育児、仕事となんとかこの3つをこなしながら、毎日慌ただしくも、家族3人で幸せな日々を送っていました。
夫は営業という職業柄、帰宅時間も深夜になることが多く、平日はなかなか子どもとふれあう時間の余裕がありませんでした。それでも、休みの日には積極的に子どもと遊んでくれたり、家事にも協力的だったりしたんです。
ママ友たちにはよく
「お宅の旦那さんはいつも優しくていいわね」
なんて言われたりしたこともありましたね。
そんな日々が続き長男が2歳になった頃、2人目の妊娠がわかったんです。「そろそろ2人目が欲しいね」と夫とも話していた時期でもあったので、私はすごくうれしかったので、すぐに夫に報告したところ、とても喜んでくれました。
急に夫の様子がおかしくなって
でも、私の妊娠が分かって2〜3週間たったあたりから、夫の様子が少しずつおかしくなったんです……。
帰宅時間は遅いことはわかっていましたが、それまでは平日だと週2回は家で夕飯を食べていたんです。それが、毎日残業や接待という理由で週に1度も家で食事をしないことが増えていきました。たまに少し早めの時間帯に帰ってきたとしても、夕食には手を付けないようになりました。だから、以前に比べて、家族で食卓を囲む機会はぐっと減りました。
所属する部署も変わっていないはずだし、「新しいプロジェクトが始まったことで急に忙しくなったのかな」
私は勝手にこう思っていたんです。
毎日深夜に帰宅する夫が、「十分に睡眠をとれているのかな?」「食事も栄養のあるものをきちんと食べているのかな?」など、私は夫の体調のことが気がかりでしたが、身体の調子を聞いても、夫は「大丈夫」とだけしか答えてくれませんでした。
それから次第に夫と私と子どもの生活時間帯にズレが生じ始めて、家族3人が顔を合わせてゆっくり会話する機会もだんだんとなくなっていきました。
ちょうどそのころ、私は第一子のときにはほとんどなかったひどいつわりに苦しめられ、寝込む日が続いていました。
ヤンチャで遊び盛りの2歳児の世話や家事をすることもままならず、頻繁に2人で実家に戻り、家を空けることが多くなってしまいました。
その間に、夫は休日出勤や急な出張が以前にも増して多くなりました。その時点でさすがに「これはちょっとおかしいのでは?」と疑問に感じるべきだったのかもしれません。
だけど、当時の私にはそこまで考える余裕はなかったんです。
「オレのことは気にせず、無理しないでゆっくり休んで」
夫も、私を気遣ってか実家での療養を勧めてくれました。
そして、休みの日には疲れた顔ひとつせず、いつも通り子どもと遊んでくれたり、私の実家にも手みやげを持って私のいる実家に顔を見せに来てくれたりしたんです。
「仕事が忙しいのにもかかわらず、ちゃんと家族のことも考えてくれている」
私はその時、「この人なら、大丈夫」と、近い将来に4人になる家族の未来を想像していたのです・・・。
偶然見つけたポケットの中の怪しいレシート

偶然見つけた怪しい一枚のレシート
私の体調もだいぶ落ち着き、家にいることが増え始めましたが、それでも夫の帰宅時間は相変わらず遅いままでした。帰りが12時を過ぎることも多く、休日出勤で土日も家を空ける状況が続いていました。
そのころ、私は体調が万全でないこともあり、長男に合わせて、早い時間帯に就寝していたため、夫と顔を合わせるのは朝の1時間程しかありませんでした。
しかも、夫は朝にはいつも慌ただしく、早々に支度を済ませ、家を出て行っていました。そのため、なかなかゆっくり話をする機会もなかったのです。私は夫に放っておかれているようで、この状況に少し不満を感じていました。
「最近、話す時間が少なくて寂しい」
ある時、私は夫にこう訴えました。でも、「そうかな?」と夫は意に介しませんでした。たまに早く帰宅した時も、夫は常にケータイを気にしている様子で、私のことばもどこか上の空だったのです。
そんなある日、洋服をまとめてクリーニングに出そうと、クローゼットの中の整理をしていたところ、夫のスーツのポケットの中に一枚のレシートが残っているのを偶然見つけてしまったのです。
よく見てみると、それはレストランのレシートでした。しかし、そのレストランは夫の会社の近くでもなく、自宅近辺でもない店でした。もちろん、私も行ったことがありません。さらに、日付を見ると夫が「残業で帰りが遅くなる」と連絡をしてきた日だったのです…。
私はレシートに印字された、頼んでいるメニューをじっくりと確かめました。そこには夫の好物のほかに、ワインやカシス系の飲み物など、女性が好んで注文しそうなメニューが並んでいたのです。このレシートの中身に私は違和感を覚えざるをえませんでした。
「会社の飲み会だったのかな…」
そう思いました。それからクローゼットの近くに置いている、ゴミ箱に目を向けると、そこにも数枚レシートが捨てられていることに気が付きました。
それはカラオケ店のものやコンビニ、カフェなど、店の種類はまちまちでしたが、中には休日出勤といって家を出ていった日付のレシートもありました。それらが無造作に捨てられていたのです。私は何とも言えない、モヤモヤとした気持ちを抱きました。一方で、そのレシートをこっそり集めて保管しておくことにしたのです。
夫の行動を記録するようになった、ある出来事
私は夫にレシートを見つけたことを伝えようか、伝えないかすごく悩みました。問い詰めたところで、正直には話さないだろうし、逆に「変に警戒されてしまうかも」と思ったのです。
しかし、私は我慢することができず、その日、帰宅した夫に何気なく、「クリーニングに出そうと思ってポケットを調べていたら、このレシートが出てきた」とレシートを見せたのです。
夫は特に顔色ひとつ変えることなく、普段通りの表情と声色で「捨てておいて」という返事でした。続けて「なぜこんな遠い場所で?」と尋ねると、「営業の帰りに会社の人たちと行ったんだ」と言ったのです。
「残業すると私には連絡をしてきたのに、会社から離れた場所で飲み会なんて、本当? 一緒にいたのは女性?」
夫の前では平静を装いながらも、心の中ではさまざまな疑問が浮かび上がり、完全にモヤモヤした気持ちを拭い去ることはできませんでした。
しかし、この日はそれ以上追求することは辞め、そのかわり、これからは夫の動向をこまめにチェックしようと決めました。
「今までが夫に対してあまりにも無頓着すぎたかも」と、自身の反省をしながら、この出来事をきっかけに、私は手帳に夫の残業や休日出勤、出張などを書き残すようになりました。その時は、この行動が、後に活きてくるなんて、思ってもいませんでした・・・。
偶然見つけてしまった、夫が消し忘れたカーナビの履歴

夫の怪しい行動に疑心暗鬼になってしまい…
夫のスーツのポケットから怪しいレシートを見つけて以降、私は夫が残業で帰りが遅い日や休日出勤、出張など、仕事を理由に家を空ける日をこまめに手帳につけるようにしました。
夫は、時に「接待や付き合いだ」と言って朝方に帰宅することもしばしばありました。
「もしかして夫は浮気をしている??」
夫に疑いの目を向けるようになってからというもの、私は夫の一挙手一投足が気になって仕方がありませんでした。
夫がリビングでケータイを眺めている姿や夜にタバコを買いに出かけていく姿さえ、「怪しい」と思うようになっていたのです。夫のあらゆることに疑心暗鬼になってしまい不安で眠れない夜が続きました。
私は夫がお風呂に入っているときなどの隙を見計らって、怪しいレシートなどはないか、財布の中をチェックもしました。もちろん、クレジットカードの明細も不審な点がないかも確認も怠りませんでした。
しかし、私が怪しいレシートを発見したことを本人に伝えてしまったからからなのか、その後一切、夫のポケットや財布からは怪しいレシートは見つかりませんでした。それならいっそのこと、「夫のケータイを見てしまおうか」とも思いました。でもケータイはロックがかけられており、中身を確認することはできませんでした。
“夫の浮気”を意識し始めたタイミングでの出来事
気付けば、おなかの第二子の妊娠も安定期を迎えていました。一方で夫に対する気持ちはモヤモヤとしたまま過ごしていました。
そのころは長男の育児に加え、仕事も産休に入る前の引き継ぎの準備などで慌ただしく日々は過ぎていきました。そして私が産休、育休を再度取得することに対して、職場の一部同僚からは風当たりがキツいものがありました。私はその対応に気を揉むことが多くなりました。そうなると“夫の浮気”については前ほど考えないようになっていました。
ただ第二子の性別が女の子ということがわかったことは、家の雰囲気を大きく変えた出来事でした。もともと第二子に女の子を希望していた夫はこのニュースにとても喜んでくれました。そして、女の子を授かったことをきっかけに我が家は久しぶりに明るさを取り戻したのでした。
「このまま、夫の気持ちが家族に向いてくれたら…」
その時、私は強くこう思いました。
おなかの子が女の子と分かった後は夫も徐々に家にいる時間が増えました。息子も夫と過ごせることをとても喜んでいました。その姿を見て私はホッと胸をなで下ろしました。
ある休日、夫が息子を見ていてくれるというので、自宅から少し離れた大型スーパーに買い物に行くことにしました。夫が休日出勤などで使用している車を運転し、私1人で出かけることにしたのです。
いつもは夫に運転任せているので、数か月ぶりの運転に緊張しながら、慣れないカーナビの操作に悪戦苦闘していると、偶然、目的地の履歴に隣の県の大型ショッピングセンターが登録されているのを見つけてしまったのです。
それだけではありません、私がまったく行った覚えのないレジャー施設などの履歴も残っていたのです。もちろん夫一人で行くわけもないでしょう。
私は動揺を隠せないまま、震える指で履歴をさかのぼっていくと、夫が仕事でも行く機会がなさそうな、自宅から逆方向の駅付近の住所が一件登録されていました。その場所は会社の反対方向でもあったのです。地図上で確認しただけですが、おそらく、個人宅でしょう。
「嘘でしょ…」
一瞬自分の目を疑いましたが、気を取り直し、私はそれらの履歴の表示画面をスマホのカメラで撮っておくことにしました。この出来事は私の中の夫の浮気への疑いが、一気に確信へと変化した瞬間だったのです・・・。
夫の言葉を信じて許した、一度目の浮気

夫の裏切りに対する怒りと悲しみ
「いつから夫は浮気をしていたんだろう…?」
「これまで仕事と言って出かけていったのは全部嘘だったの…?」
私の頭の中は次々と浮かび上がる疑問でいっぱいでした。
しかし、これまでの夫の言動を振り返ってみると、確かに怪しいと疑うべき点はたくさんあったのです。
それでも、長い間夫に嘘をつかれていたかと思うと、「悲しい」という気持ちになる反面、「腹立たしい」という感情が胸の内からこみ上げてきました。
「あんなにつらいつわりにも耐えてきたのに…。誰の子どもだと思っているの!!」
私が妊娠初期にひどいつわりで体調を崩していた時も、もしかすると夫はほかの女性と会っていたかもしれないのです。そう考えると、夫の無神経で軽率な行動に今度は怒りで手が震えました。
「どんな女性と会っているのか、本当に浮気をしているかどうか突き止めてみたい」
こう強く思うようになったのです。
私はカーナビの履歴を見たあと、何食わぬ顔で買い物から家に戻り、夫の前ではできるだけいつも通りに振る舞うように努めました。レシートの件もあったので、今回は直接本人には確かめるようなことはせず、少し様子を見ることにしました。
確実な証拠をつかむため、浮気調査を依頼することに
私がなぜこんなにも夫の浮気に対して過敏に反応してしまうのかというと、実は夫は長男妊娠中にも浮気をした過去があるからです。前回は出産前後の3か月間、私が実家に戻っていた時期でした。
その時、夫は別の女性と関係を持っていたのです。
その時は、私が里帰りしてすぐのころは毎週末必ず会いにきてくれていた夫が、「溜まった家事をやらなくちゃいけないから」「試験の勉強がある」などと何かと理由をつけてはだんだん会いにきてくれなくなったのがきっかけで夫の浮気が発覚したのです。
そして、ある日、実家に泊まりにきた夫が寝ている隙に、思い切って携帯の中を見たところ、夫が女性とメールのやりとりをしているのを見つけてしまったのです。「早く会いたい」や「好きだよ」「いつ会える?」などという言葉が並んでいる画面を見た瞬間のショックは今でも忘れられません。
そのメールを見た私は、すぐに夫を起こし、問い詰めました。夫は浮気の相手が取引先の年下の女の子であると白状しました。そして「向こうから迫られ断りきれなかった。関係を持ったのは1度だけだ」と言ったのです。
その時はこれが一度目の浮気ということもあり、私は「もう二度としない」という夫の言葉を信じることにしました。なによりも、これから生まれてくる子どものためにも、夫の浮気を許して、これからも信じていかなくてはと頑張っていこうと決めたのです。
そういう過去の経験を乗り越え、私は夫のことを信じて尽くしてきました。それにもかかわらず、今回の出来事で一気に裏切られたと感じずにはいられなかったのです。ただ「今度こそ夫との関係修復は無理かもしれない」と思う反面、まだ夫を信じたい気持ちもわずかに残っていました。
夫はもう忘れているかもしれませんが、前回の浮気が発覚した後の話し合いの際に、私は「次は絶対許さない、離婚する」と夫に伝えているのです。
ただ、今の段階では夫が本当に浮気しているのかどうか、まだ決まったわけでありません。私が手帳につけている夫の休日出勤や残業の記録、こそこそと集めているレシート、カーナビの履歴の写真も浮気の証拠としては不十分でしょう。
私は、夫が浮気をしているのかどうか、本当のことが知りたいという気持ちが強くなっていきました。そんな時、インターネットで探偵事務所の広告が目に入ってきました。これを見たとき、「調べてもらうのもありかな」と思ったのです。
でも、そこには1つのハードルが立ちはだかっていました・・・。
浮気調査に依頼するまでの手順と準備

あと一歩がなかなか踏み出せず
「浮気調査を依頼したい」と思い立った私。でも実際に行動に移すとなると、インターネットで調べてみても、あまりにも探偵事務所の数が多すぎて、どこの探偵事務所にお願いすればよいのか途方に暮れていました。
きちんとした実績があって、信頼のできる会社に頼みたいと思い、いろいろな口コミサイトなど見て回ったのですが、どれくらいの費用がかかるのかなどが今一つ分からず不安になりました。また内容が内容なだけに、身近な人に相談するわけにもいきません。そのため、あと一歩をなかなか踏み出すことができずにいました。
そんなある日、学生時代の友人から連絡があり、久しぶりにお茶でもしようかということになったのです。
この友人とは長男が生まれてからはなかなか会うこともできませんでした。彼女とはこれが約3年ぶりの再会になったのです。この間に彼女も結婚して、一児の母になっていました。
そんな彼女と私は久しぶりに会えることを楽しみにしていました。それに、ここのところ夫の浮気のことで気分がふさぎ込んでいたので、少しでも気を紛らわすことができたらという気持ちもありました。
友人の紹介で探偵事務所を決める
久しぶりに会った友人は以前に比べて、ずっと痩せていました。私はその顔を見て早々に何かあったのかを思わず尋ねてしまいました。
すると、彼女は夫の浮気が原因で離婚調停の真っ只中だというのです。
詳しく話を聞いてみると、子どもを出産した直後から夫の様子がおかしいと思い始めたといいます。そして探偵事務所で浮気調査を依頼したのだそうです。結果は黒。彼女の夫は学生時代の元彼女と浮気をしていたのです。浮気は友人の妊娠が分かった直後から始まっていたそうです。
友人は浮気という行為をどうしても許すことができず、最初から関係を修復するつもりはなかったといいます。現在はすでに別居をして働きながら子育てをしているのだそうです。
「どこの家庭でも同じような悩みを抱えているのね」
私はこう思わずにはいられませんでした。彼女の状況を心の中で今の自分の状況と重ねていたところ、「ミキの家は旦那さんが優しくていいよね〜」と言われました。「そんなことないよ、ウチだって…」と私は思わず反論してしまい、今私が置かれている状況とこれまでの経緯を彼女に話すことになったのです。
私は今まで誰にも打ち明けることができず、抱え込んでいた悩みを友人に話すことができました。そして、浮気調査をどこにお願いしたらいいのか悩んでいるということも話したのです。
「だったら、私がお願いした探偵事務所に相談してみたら?」
彼女はこう言って、ある探偵事務所を紹介してくれることになったのです。
彼女の話では最初の問い合わせは匿名でも大丈夫、料金も発生しないということだったので、私は決意して、友人に紹介してもらった探偵事務所に一度電話をしてみることにしました。
友人が実際に利用したことがあるという安心感はありましたが、実際に電話してみると、問い合わせへの対応がとても親切で好印象だったことが、この事務所にしようと思った大きな決め手になりました。
その後、事務所を尋ねて、担当者に顔写真を渡し、年齢、職場、車のナンバーなどの夫の情報と行動パターンを伝えました。また私が集めていたレシートや、カーナビの履歴の写真なども渡しました。
担当者には、もし夫が浮気をしていることの証拠がつかめたとしたら、「それを証拠に離婚に進むかもしれない」そして「何よりもとにかく真実が知りたい」という気持ちを伝え、まずは金曜の夜や休日出勤日を中心に夫の行動を調べてもらうことになりました。
調査結果を待つまでは、気が気ではなく、何をやっても集中できない日々が続きました・・・。
詳細が明らかになった夫の浮気

報告を待つ、落ち着かない日々
探偵事務所に夫の浮気の調査を依頼してからの数日間は「夫に勘付かれてしまったらどうしよう」と考えずにはいられなかったり、普段通りにちゃんと振る舞えているのか、夫とのやりとりが変にぎくしゃくしてしまっていないかと思ったりして、気が気ではありませんでした。調査結果の報告を待つだけだというのに。
不思議なことに、報告の日が近づくにつれて、真実が判明することが怖くないと思うこともありました。
その一方で、これからどうなるのかなという漠然とした不安で、ナーバスになってしまう日もありました。
ふとした瞬間に夫との結婚生活を思い返したり、長男と3人との思い出が頭をよぎったり、これから生まれてくる子のことなどを考えてしまっていたのです。私はいろいろな感情を抑えて、平静を装うことに必死でした。
幸いにも、その時は仕事がそろそろ産休に入るというタイミングでした。だから仕事に打ち込んだり、長男と過ごしたりすることで、自分の気持ちを紛らわせて淡々と調査結果を待っていました。
裁判で有利になる確実な浮気の証拠
依頼から2週間経ち、いよいよ探偵事務所から調査報告を聞く日を迎えました。
事務所で私が聞いた調査の結果。
それは夫が浮気をしているという事実でした。
覚悟はしていました。でも、いざ現実を突きつけられると本当に頭の中って真っ白になるんですね。鈍器で突然頭を殴られたような、それくらい大きなショックを受けました。
報告書には、正式に依頼をした翌日からの夫の行動が詳しく書かれてしました。その中で最初に私の気持ちが揺らいだのは、夫から残業で帰りが遅くなるという言われた日の記述でした。仕事を終え会社を出た夫は、家の逆方向にあたる、ある駅に向かっていたのです。そこは以前、カーナビの履歴に残っていた駅と同じでした。私の勘は当たっていたのです。
事務所の担当者からは夫の様子を収めた写真も見せてもらいました。
そこには慣れた様子で電車を乗り継ぐ夫の姿やあるマンションに入っていく夫の姿と一緒に、それを笑顔で迎え入れる女性の姿が写っていました。その数時間後、女性に見送られ帰途につく夫の様子も撮られていました。
探偵事務所に調査をしてもらった2週間の間、夫は4回も平日にこの女性の家に立ち寄っていたのです。また、夫が休日出勤といって出かけていった週末は自宅から車でまっすぐ、そのマンションに向かい、女性の部屋で過ごしていたようでした。
写真にはマンションに入っていく夫の姿だけでなく、駅前のスーパーで女性と手をつなぎ、一緒に買い物をする様子も写っており、笑顔で並んで歩くその姿はまるでカップルか夫婦のようでした。それを見た私は悲しいような、悔しいような、複雑な気持ちで一杯になり、思わず涙がこぼれました。
探偵事務所の担当者によると、この女性は夫の会社の後輩にあたる女性ということでした。
夫に対しては、一度目の浮気の時に交わした約束を破られたことに憤り覚えましたが、夫が既婚者と知りながら、「なぜ関係を持つようになったのか」「夫との関係は本気なのか」など相手の女性に対しても怒りが込み上げました。
担当者からは、すぐにはこの調査結果を夫には伝えないこと、また感情的になって問い詰めないようにというアドバイスを受けました。
それを聞いた私は一旦この結果を持ち帰ることにしました。なぜなら、「もし離婚に向かって本気で動きだすのであれば、その際にこの証拠は有利に働くから」との説明が探偵事務所の担当者からあったからでした。
私も少し冷静になって、自分が今後どうしていきたいのか、私たち夫婦にとってどうすることが一番よいのか、また、2人の子供にとって何がベストなのかをこの機会に真剣に考えようと思いました。そこで、あるアドバイスに従うことにしたのです・・・。
夫の浮気のショックで体調を崩してしまった私

夫の浮気に翻弄され続けた結果
「結果は、こうなるだろう」
あのレシートを見つけた時から、なんとなくですが、「浮気しているのだろうな」と確信めいたものが私の中にありました。
でもいざ、探偵事務所で証拠の写真を目の前に突き付けられると自分が想像していた以上の精神的ダメージを受けました。
なぜなら、その日以降、私は食事がのどを通らなくなり、眠れない日が続くようになってしまったのです。また、些細なことでイライラしてしまったり、夫へ八つ当たりをするように喚き散らしたりするような日もありました。
ちょっとしたことが原因で夫とけんかをすることも増えました。時には感情的になって、浮気していることを問い詰めてやりたいと何度も思いましたが。
しかしそのたびごとに「今はそのタイミングじゃない」と思いとどまりました。そうしたことが何度も続きました。言いたくても言い出せない。そのことに私はもどかしさを感じる日々を過ごしたのです。
自分ではコントロールできない、激しい気持ちの浮き沈みに、私自身疲れていってしまいました。「お腹の赤ちゃんのためにもしっかりしないと。頑張らなきゃ」と心では思っていても、食べられない、眠れない、という状況では体調もなかなか回復できませんでした。私は周囲から心配されるほど、日に日にやつれて、表情もどんどん暗くなっていきました。
なかなか“離婚”へ踏み切れない理由
「夫に浮気の証拠を突きつけ、今度こそ離婚をするのか」
「それとも、私の夫を許せないという気持ちを優先させるのではなく、2人の子どものために今回も夫を許し、あくまでも夫婦を続けていくのがよいのか」
私の心はこの2つの考えで揺れ動き、いつまでもふんぎりがつかずにいました。ただ、こうして私が体調を崩しながら思い悩んでいる間にも、夫は浮気相手の元に通っていることを想像すると、いらだちでどうにかなってしまいそうでした。
家庭の不穏な雰囲気を察してか、息子は私の側から離れようとしませんでした。そんな息子の様子を見ていたら、ますます、これからの家族のあり方について考えなくてはと私は強く思ったのです。
もう夫に不信感しか抱けなくなり…
あと少しで仕事も産休に入るというある日、私は今までにないようなお腹の痛みを感じ、実家の母に付き添ってもらって、慌てて病院に駆け込みました。
診断結果はストレスによる切迫早産の恐れがあるということでした。医師には絶対安静を命じられました。そこで仕事は前倒しで産休に入らせてもらい、予定よりも早く実家に里帰りをして、療養することになりました。
こういう事態になってはじめて、夫の浮気の件について、私は自分が思っている以上に大きなストレスを感じているということと、心身ともに疲弊しきっていることに気付いたのです。
予期せぬタイミングで、突然夫とは別居状態になってしまいましたが、第一子の出産の時と同様、夫は週末ごとに実家にやって来ました。さすがに前回浮気がバレたことから学習したのでしょう。今回はよっぽどの理由がない限り、夫はほぼ毎週、私と息子に会いにきました。
しかし、私は残念なことに、そのように献身的に振る舞う夫に対して「どうせ平日は浮気相手のところで羽根を伸ばしているのだろう」と、どこか冷めた目でしか見られなくなっていたのです。
そして、私はもう夫に不信感しかないこと、表面上は夫婦でいることはできても、愛情はすでになく、惰性でしか一緒にはいられないと思うようになったのです。
「一度目の浮気の際に約束した『二度としない』という約束を破った夫の裏切り行為がどうしても許せない」
こう思わずにはいられなかった私は、一気に“離婚”へと気持ちが傾いていったのです・・・。
夫が自宅に浮気相手を連れ込んでいた証拠を見つけた日

無事出産を終え、気持ちが落ち着き始めた
予定日よりも少し早かったのですが、私は長女を無事に出産することができました。夫は出産ギリギリまで、まめに私の元を訪れてくれました。そして、夫は会社から病院に駆けつけて、初めて出産にも立ち会ってくれました。
待望の女の子が家族に加わったことで、一気に家族の雰囲気は明るいものとなりました。長女の誕生は夫だけでなく、息子がとても喜んでくれました。そのことを私は嬉しく思いました。
振り返ってみると、長女の妊娠中、私はずっと夫の浮気問題に悩まされていたことになります。そんな中で私は長女が無事生まれてきてくれたことにホッとしました。
また、娘を抱いていると、これまでの悲しいことや大変だったこと、辛かったことを全部忘れることができました。娘の顔を見るたび、「私はこの子のためにも、もっとしっかりしなくては」と気を引き締めました。
出産後は体調も順調に回復していきました。それと同じくして出産前にはあれほど不安定だった精神面も落ちつきを取り戻しはじめていました。悩む暇がないほどに、寝る間を惜しんで、生まれたばかりの娘の世話をガムシャラにしていたこともよかったのかもしれません。
里帰り中に浮気相手を自宅に連れ込んでいた夫
出産してからちょうど1か月たったころ、私は急に必要になったものを取りに、久しぶりに自宅に一旦戻ることにしました。
出産前にはろくに準備もしないまま、慌ただしく里帰りをしてしまったので、こうやって娘と自宅に戻ってくることができたことをうれしく思いました。家を空けたのはたった数か月でしたが懐かしさすら感じていました。
しかし、感傷に浸っていたのも束の間、リビングに入った瞬間から、なんとなく家の中に違和感を覚えたのです。
ゆっくり家の中を見て回ると、ちょっとした家具の配置、食器の位置が変わっているほか、リビングに飾っていた長男の写真が伏せられていました。さらには、インテリアの一部が変わっていました。
「どうして?」
私は不思議に思わずにはいられませんでした。
荷物を置きに寝室に入ると、その違和感の理由が判明しました。寝室に入り、バッグを床に置くと、ベッドのサイドボードの下に何か光るものが落ちていることに気がつきました。近寄って拾い上げてみると、それはピアスのキャッチ部分だったのです。
ピアスのキャッチだと分かった瞬間、私は自分でサーッと血の気が引いていくのがわかりました
私は息子が生まれてから、ピアスを付けていないのです。
おそらく、浮気相手のものなのでしょう。あろうことか、夫は私が切迫早産一歩手前になるほど、精神的にも身体的にも追いつめられて苦しんでいた時に、浮気相手を自宅に連れ込んでいたのです。そして何食わぬ顔で、週末は私と息子に会いに来ていたのです。
ここまでくると、ショックを通り越して、自然と怒りしか湧いてきませんでした。約4年と短いながらも夫婦生活を送り、家族として暮らして来た夫が一体何を考えているのか、本当に理解できませんでした。そのことを思うと悔しさで泣いてしまいそうでした。
私は部屋の中で立ちすくんだまま、私に対してこんなに無神経で思いやりのないことを平気な顔でする夫に対して、嫌悪をしか感じなくなっていました。
浮気の証拠は寝室で見つけたピアスのキャッチだけではありませんでした。洗面台には明らかに私のものではない長さの髪の毛が落ちているなど、家の至る所で浮気相手の痕跡があったのです。
この家で夫が浮気相手と過ごしていたかと思うと、私はいてもたってもいられませんでした。私は早々に自宅を後にして実家に戻りました。
「もう、我慢の限界! こうなったら!!」
この時、私はある決断を心の中でしたのです・・・。
浮気の証拠を突き付けられた夫は・・・

夫との直接対決
私は我慢の限界を感じ、いよいよ夫に浮気を問い詰めることにしました。
「今日一時帰宅しました。話したいことがあるので実家で待っています」
私はこう打って夫にメールを送りました。
夫はそのメールの文章だけで、私が何を言いたいのか察したようでした。顔を合わせると開口一番、必死に謝ってきたのです。
「本当に申し訳ない」
「相手とはすぐに別れる」
「オレが全部悪い」
「許して欲しい」
感情的に夫を問い詰めてしまいそうになる気持ちを抑えながら、私は冷静を装いました。そして淡々と、これまで私が集めて来たレシートやナビの履歴の写真、探偵事務所に依頼して撮影してもらった写真などの証拠の数々を夫の目の前に出して突きつけました。同時に出産前から浮気を知っていたことをすべて夫に伝えたのです。
並べられた数々の証拠を見て、夫はもうこれ以上言い逃れすることはできないと観念した様子でした。特に浮気相手と写真を撮られていたことにはショックを受けていました。
浮気相手は探偵事務所の報告通り、同じ会社の女性でした。私の妊娠が発覚する前のタイミングでの異動で同じ営業チームになったことが、きっかけだったと夫は言いました。そして「ダメだと思いながら関係を持ってしまった」と夫はわびて、ひたすら私に許しを乞いました。
「もう一度だけチャンスが欲しい」
「キミと子どもたちを愛している」
そんな夫の様子を目の前にしても、私は一向に許す気持ちにはなれませんでした。そして「離婚を考えている」と冷静な口調で夫に伝えました。そして、この日はお互いの両親にもこの状況を伝えて、一度集まって話し合う機会を設けるということで終わりました。
関係修復したい夫と離婚したい私
数日後、私と夫の両親を交えた6人で話し合いが行われました。しかし、別れたくない夫と、離婚しか考えられない私との間にある溝は埋まらず、結局、結論は出ませんでした。
話し合い中、夫の両親は私にひたすら謝り続けました。彼らは離婚については長女も生まれたばかりということで、できれば避けて欲しいというような姿勢でした。
「子どもたちのために今は離婚を回避したほうがよいのでは」という考えは私の両親も同じでした。
そこで、私と子どもたちはしばらく実家で過ごし、今後のことをゆっくり話し合っていくようにすすめられました。この話し合いの結果、当面の間、私は夫とは別居し距離を置くことになりました。そして私と息子、生まれたばかりの娘の親子3人は実家に身を寄せることになったのです。
自暴自棄になった私は取引先の男性と
夫との話し合いの後、すっかりエネルギーを使い果たしてしまった私は、ぼんやりと過ごす日が増えていました。
そんなある日、仕事を通じて親しくしていた取引先の営業のみなさんが出産祝いを持って遊びにきてくれました。
その内の男性の1人は実家の近所に住んでいて、同い年ということもあり、産休に入る前からもいろいろ相談に乗ってくれるような関係でした。今回、お祝いを持って来てくれたことをきっかけに、育児の息抜きになればと誘われるままに、時々会うようになりました。そして、夫との今後も見えず、自暴自棄になっていた私は、ある日一度だけ、その男性と一線を越えてしまったのです。
「私は一体何をやっているんだろう…」
自責の念にかられましたが、一線を越えてしまったのはその一度だけで、その後も以前と変わらずによき相談相手として、男性とは付き合いを続けていました。
煮え切らない夫との関係に悩んでいた私に対して、その男性は「離婚調停を起こし、夫と浮気相手に対して慰謝料を請求してはどうか」とアドバイスをしてくれました。そこで、私は本格的に離婚に向けて動き出すことを決めたのです・・・。
離婚を決断し調停に踏み切る

夫と浮気相手に対して慰謝料を請求
「子どもたちがかわいそう」
「両親そろっていたほうが、子どもたちは幸せだよ」
両親をはじめ、周囲の友人たちは、口々に第二子を出産したばかりの私に、離婚を思いとどまるようすすめてきました。
しかし、私は探偵事務所に調査を依頼し、確固たる証拠をつかんだ時から、夫に対しての愛情は完全に冷めていたのです。それにうわべだけを取り繕って家族として暮らしていくことに限界も感じていました。そして「もう浮気はしない」という約束を夫に破られたことが、ずっと心の中にひっかかっていたのです。
それに、これからも夫の帰宅が遅くなったり、仕事だと出かけていったりする姿を見るたび、そしして夫の些細な行動もすべて「浮気しているのでは」と怪しんでしまいそうな自分がイヤでした。
さらに、夫のことを常に疑い続けているような信頼関係が築けていない夫婦が子どもたちをちゃんと育てていけるのかも不安でした。何よりも、この家庭環境が子どものためによいはずがないと思ったのが、離婚調停に踏み切る一番の理由になりました。
私は産休空けには夫とのことについて決着をつけることを目指して、動き始めました。
離婚調停では夫に慰謝料、養育費の支払い、子ども2人の親権を獲得するだけでなく、浮気相手の女性にも慰謝料を請求して責任を感じてもらいたいと思いました。そこで調査を頼んだ探偵事務所に再度相談し、弁護士を紹介してもらうことにしました。
弁護士を立てたこともあり、離婚調停を申し立ててからは、トントン拍子で話が進んでいきました。
最初こそ、離婚する事に反対し、調停に出席することにも消極的だった夫ですが、浮気の事実は認めていました。もし裁判に発展したのならば、慰謝料や養育費の支払い義務が発生することは明らかでした。
離婚調停では夫の浮気の証拠をきちんとそろえていたことも私に有利に働きました。
今回の浮気が2度目であることや2回の浮気がどちらも私の妊娠中に行われたことで、私が多大な精神的苦痛を受けたという訴えも考慮してもらえました。そして数回の調停を経て、夫からの慰謝料の支払いが決まりました。さらに、財産分与と月々の養育費の支払い額、子どもたちの親権は私が持つことも決まりました。
浮気相手の女性へはまず、慰謝料を請求する旨を内容証明で送りました。しかし、その段階で彼女は夫との関係は認めようとせず、支払いを拒否されました。しかし、決定的な証拠があることがわかると一転、夫との不倫関係を認めました。その後は「会社には知らせないで欲しい」と懇願もされました。そして結果的には小額でしたが慰謝料も支払ってもらうことができました。
心機一転、親子3人での生活がスタート
私は当初の目標のとおり、産休が明ける頃には夫のことがすべて片づいて、スッキリとした気持ちで復職することができました。
幸い、私には正社員で会社に勤めていました。両親も快く私たち親子を受け入れてくれ、サポートしてくれたので、当面の生活には困らずに済みました。夫と浮気相手からの支払いは今後の子どもたちの教育費に当てようと思っています。
こんなにもスムーズに離婚できるとは思っていなかったので、多少費用はかかりましたが、本当に離婚調停の際に弁護士に相談してよかったと思っています。
妊娠中の浮気調査も身重の私に代わって、探偵事務所が動いてくれました。そこで得た証拠は後々の話し合いにおいて効果がありました。
子どもを抱えて自由に動けない私にとって、そういった方たちの協力があったからこそ今こうやって笑顔でいられるのだと思います。
結婚生活をしていたときよりも、表情もずっと明るくなったといわれる事が多くなり、思い切って離婚に踏み切ってよかったと今では心から思っています。